コラム(未分類)

公正証書を作成する

コラム(未分類)

1 公正証書とは

公正証書とは,私人(個人又は会社その他のからの嘱託により,公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。

公正証書には強い証明力が認められています。公正証書に書いてあることは事実だということを前提にして良いのです。逆に、公正証書の内容が真実ではないなどと主張する人は、裁判を起こしてその主張を証明する証拠を提出しなければなりません。

 

2 公正証書の効果

金銭債務,すなわち金銭の支払を目的とする債務についての公正証書は,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている場合は執行力を有します。

「執行力」というのは,債務者が契約等で定めた約束に違反して債務を履行しなかった場合,債権者において強制執行をすることができる効力をいいます。この執行力を有する公正証書を,特に「執行証書」といいます。

執行力は、裁判で判決をもらわなければ得られないものですが、執行証書を作成しておけば,裁判を経なくても迅速に執行力の付与を受けることができるのです。

 

3 公正証書の種類

――契約に関する公正証書――

土地や建物の売買,賃貸借,金銭消費貸借、贈与,委任,請負などの契約に関する

公正証書が一般的です。

 

それ以外にも、例えば、

◇土地の境界線をお互いに認め合うための合意

◇チェーン店経営に関する契約

など様々な契約に関する公正証書を作成することができます。

 

また,最近は,公正証書によることが法令上予定されている契約も増えています。主な  ものとしては

◇定期建物賃貸借制度

この制度は,期間の定めがある建物の賃貸借契約をする場合,公正証書等の書面によって契約する場合にかぎり,契約の更新がなく期限の到来によって契約が終了するものと定めることができるようにしたものです。

 

◇任意後見制度

これは,認知症などにより判断能力が不十分な状況に陥った場合に備えてあらかじめ代理人(任意後見人)を選任し,自分の生活維持や療養看護,財産管理のために必要な事務などを代わってしてもらうための任意後見契約を締結することを内容とするものですが,これは必ず公正証書によらなければならないものとされています。

 

◇離婚時年金分割制度

年金分割の申立ての添付資料として,裁判所の確定判決などのほかに,婚姻当事者間の合意を証する資料として,公正証書が定められています。

 

――遺言に関する公正証書――

遺言は,自分の死後に,その財産を誰にどのような割合で残すのかを決めたり,自分を虐待するなどした相続人を廃除したり,婚外子を認知したり,先祖のお墓を誰に守ってもらうかを定めたりするなど,自分の死後のことを明確に決めておくための一種の法律行為です。

遺言の方式には数種類の方式がありますが,一番利用されているのは自筆証書による遺言と公正証書による遺言の2種類です。法律は厳格な方式を定めていますので,自筆証書による遺言の場合は,その方式に従っていないため無効であったり,その内容が自分に不利な内容であると見た相続人によって破棄,隠匿されるなどの危険があります。

その他,遺言の真意を巡って相続人間で争いが生じる場合が少なくなく,必ず家庭裁判所の検認という手続が必要とされます。これに対して,公正証書による遺言は,公平かつ中立な第三者である公証人が法定の方式に従って作成するものであり,以上のような心配や危険性はなく,自筆証書による遺言よりもはるかに安全・確実であり,家庭裁判所の検認の手続も不要です。
相続を巡る争いを未然に防止し,権利の迅速・的確な移転を可能にするための有効な方策として,遺言公正証書を作成しておく実益は極めて高いといえます。

 

――事実実験公正証書――

権利義務や法律上の地位に関係する重要な事実について公証人が実験,すなわち五官 の作用で認識した結果を記述する公正証書を事実実験公正証書といいます。

例えば,土地の境界の現況がどうなっているかを,公証人が現地へ赴いて確認した結果などを記載します。

その他,人の意思表示や供述の内容もこの証書で証拠化することができます。例えば,いわゆる尊厳死の意思表示や,企業秘密に関する資料を持ち出した者について,その動機や経過などに関する供述などもこの事実実験公正証書に記載しておくことが可能です。将来の紛争を防止するという目的のために,非常に活用範囲の広い公正証書です。

 

4 公正証書作成の手順

――例えば、A氏とB氏が離婚公正証書を作成する場合――

以下のような流れになります。

① A氏とB氏とで、離婚条件(財産分与、養育費など)を決める。

② どこの公証人役場で公正証書を作るかを決める。(どこでもいいので、行きやすい場所を選ぶことができます。)

③ A氏、B氏いずれかが、公証人役場に連絡し、離婚公正証書を作成したい旨伝える。

④ 担当公証人に、離婚条件を伝える。(その際に、条件を記載した合意書案を送る方がその後の手続きがスムーズに進みま   す。)

⑤ A氏及びB氏がともに公証役場に行くことができる日時を確認し、公証人との間で日程調整を行う。なお、公証人役場は市役所、区役所などと同じ勤務時間帯内でしか営業していません。

⑥ 原則として、A氏、B 氏本人が公証人役場に行き、内容を確認して署名押印する。(その際、戸籍謄本、住民票、身分証明書な  どが必要となります。必要書類は公証人役場から指示されます。)

⑦ 出来上がった公正証書原本は公証人役場に保管され、本人2人には、それぞれ「公正証書正本」が渡される。

 

公証人役場はご利用しやすい交通の便の良い公証人役場をお決めください。公証人を指定することもできます。

都内に複数ある公証人役場であれば、ご希望であれば、当職において公証人に連絡します。実は、公証人の約半数は元検事で、現在都内の公証人の約半数は知り合いですので、どこの公証役場であっても依頼することはできます。おそらく、紹介があった方が手続きはスムーズに進むと思いますので、お手伝いいたします。

公正証書は、当事者本人が出向いて作成することが原則です。公証人としては、本人の意思を確認することがマストだからです。代理人で行うこともできますが、その場合は弁護士や司法書士に依頼した方がいいでしょう。