刑事事件コラム(刑事弁護)
警察からの呼び出し・事情聴取
目次
・事情聴取を拒否できるのか
・事情聴取に弁護士の同席は可能か
・事情聴取はどのように行われるのか
・認めたことを後になって覆すことはかなり困難
・早めにご相談ください
【事情聴取を拒否できるのか】
任意での事情聴取はあくまでも任意ですので、拒否することもできます。しかし、警察からの呼び出しに応じない(出頭拒否)を繰り返すと、逮捕されるおそれがありますので、警察から呼び出されたなら応じた方がいいでしょう。
警察は事件発生を知ると捜査を始めます。事件発生を知るきっかけは、被害届や告訴があった場合などです。警察は証拠を集めて容疑者を特定すると、逮捕するかどうかを検討します。その基準は、事件の重大性や特定した容疑者の特性(家族はいるか、職はあるか、前科はあるかなど)です。例えば、殺人、強盗、強姦などの重大な犯罪であれば、逮捕を前提として捜査を行いますし、万引き(窃盗)や電車内の痴漢(条例違反)などの比較的軽い罪であれば逮捕しないことが基本ですが、無職で前科があれば逮捕されることの方が多いと言えます。
警察は、逮捕しないとした場合(在宅事件といいます)は、任意での出頭を要請し、事情聴取を行います。警察はしっかり捜査をして証拠固めをした上で事情聴取をしますので、事情聴取のための呼び出し(出頭要請)があった場合は、必要な証拠はほとんど手に入れていると考えられます。
【事情聴取に弁護士の同席は可能か】
弁護士は、事情聴取に同席することはできませんが、警察署に同行して、警察に対して、事情聴取の休憩時間は弁護士と過ごすことを要求することはできます。だたし、弁護士は、事情を把握していなければ適切な対応ができませんので、少なくとも事情聴取前に十分な打ち合わせができていることが必要です。
【事情聴取はどのように行われるのか】
事情聴取や取り調べでは、事実を聞かれます。犯罪事実だけでなく、そこに至るまでの経緯や被害者との関係などについての事実です。このときは、余分なことは言わず、聞かれたことだけについてなるべく簡潔に答えることを心がける方がよいでしょう。その後、警察官や検察官が、聴取した内容を整理し、ポイントを絞り、供述調書を作成します。
そのため供述調書作成には、どうしても時間がかかります。特に第1回目のときは、半日以上かかると思っていた方が良いでしょう。供述調書はパソコンで作成することがほとんどです。目の前で警察官らがパソコンに打ち込んでいきます。その間はじっと待っていて、どきどき確認のための質問に答えるというやり方です。
そして供述調書原稿が完成したら、その場で印刷します。そして、警察官はその内容を声に出して読み上げ、書かれている内容に間違いがなければ署名押印するように言われます。
※被害者や目撃者などの参考人の事情聴取の場合には、なるべく負担が少なくなるように配慮されます。事情を聴いた後いったん帰ってもらい、構成をして供述調書の原稿を作ってから、もう一度来てもらって内容を確認するというやり方をすることがあります。
【認めたことを後になって覆すことはかなり困難】
ところで、前述したとおり、『警察官が聴取した内容を整理し、ポイントを絞り、供述調書を作成します』ということは、供述調書には容疑者が話した内容そのままを書かないということです。
そのため、後になって、「言ったことが書かれていない。捜査官が勝手に話を作ったが、署名しないといけない雰囲気にされて本当は違うと思いながらも署名した。」などと主張されることがあります。
こうした主張が、裁判で認められることはほとんどありません。新聞やテレビなどで「供述調書の証拠能力が否定された」と報道されることがありますが、これは、あまりにも珍しいので報道されるのです。
つまり、いったん供述調書に署名してしまうと、そこに書いてあることは事実だと認めたということになり、後になってこれを覆すことはかなり困難です。
しかも、自白や、そこまではいかなくとも不利益な事実を認めた供述調書は、裁判では大変重要な証拠となります。
ですから、逮捕前の事情聴取や、逮捕勾留されてからの取り調べで、自分が言ったことと違うことが供述調書に書かれていたり、言葉のニュアンスなどが納得できない場合は、その場で主張して書き直してもらうか、あるいは署名を拒否した方が良いと思います。
参考:以下は当職のコラムである『検察庁から呼び出されたら|取り調べ・事情聴取』からの引用です。こちらも参考にしてください。
【裁判での供述調書の証拠能力、信用性について】
裁判で供述調書の証拠能力、信用性が争われる場合、検察官の供述調書の方が、警察官の供述調書よりも、証拠能力、信用性が高く評価されるように法律で決まっています。
しかしこれは、被疑者以外、つまり被害者、参考人、目撃者の証言に関しての話であり、被疑者の供述調書は、警察のものと検察のものは同等に裁判で評価されます。
ですから被疑者が検察庁での取調べの際、警察での供述調書の内容と異なる供述をし、警察の供述調書とは異なる内容の供述調書が作製された場合、同等の証拠能力、信用性のある、異なる内容の供述調書があるという評価を裁判でされます。すると、どっちが本当なのか?ということになり、被疑者本人が信用できない人である、という評価を裁判でされてしまう可能性があります。
万一、警察での取調べで、あなたが記憶している事実と違う供述をしてしまい、署名捺印をしてしまったのなら、検察官に事情を話し、それを覆す内容を検察官に話し、別の内容の供述調書を作成して訂正してもらうことができます。しかし、最初(警察での供述)と違う内容であるとして、検察官に信用されない可能性がありますし、前述のように裁判でも信用されない可能性があります。
ですから、警察での供述調書の内容が、自分が記憶している内容と違っていたら、供述調書が作製された後でも、署名捺印を拒否すべきです。署名捺印をしなければ、その供述調書をなかったことにできます。
<参考>こちらのコラムもご覧ください➡ 供述調書にサインしない|事実と少しでも違っていたら
<参考>こちらのコラムもご覧ください➡ 検察庁から呼び出されたら|取調・事情聴取
【早めにご相談ください】
警察から事情聴取のための出頭要請があった時点で、弁護士に相談してアドバイスを受けることで、ご自身にとってより良い結果を導けます。
私は元検事の弁護士であり、検事生活の26年のほとんどを捜査・裁判の現場で過ごしましたので、その全てのプロセスを熟知しています。逮捕後の警察の動き、検察庁の処分の基準、裁判所の判断の基準などの、刑事事件の実務について熟知していますので、適切な弁護活動をすることができます。是非、早めにご相談ください。
ご相談、受任、終了まで、全て遠藤が責任を持ちます。途中で担当が他の弁護士に変わるということはありません。