刑事事件コラム(犯罪被害)

加害者から示談の申し入れ

刑事事件コラム(犯罪被害)

犯罪の被害に遭ってしまった。そして加害者から示談の申し入れが来た。この様な場合にどうしたらよいのかについてご説明します。

示談交渉はご自身でもできますが、できれば弁護士に依頼されることをお勧めします。弁護士に依頼すると、弁護士が全ての連絡を相手方と取りますので、あなたの住所・電話番号などが加害者や加害者側の弁護士に知られるおそれがありません。また、不利な条件での示談をしてしまうリスクを回避することができます。

仮にご自身で示談交渉をされた場合、後日、示談内容について争いが起きる場合もあります。また、加害者が弁護士に示談交渉を依頼していると、交渉相手が弁護士ということになります。その場合は、知らないうちに不利な示談内容にされてしまうこともあります。

弁護士が作る示談書は、法律的観点から遺漏のないようにするので法律専門用語を使うことが多くなります。また、あえて難しい言葉を使って加害者に有利にしようとする弁護士もいます。例えば、「被害者は加害者を宥恕する」という言葉を入れることがあります。「宥恕」といわれてすぐにその意味が分かる人はそう多くはいないのではないでしょうか。これは、平たく言うと「許す」ということです。「許す」と書いてしまうと、被害者には抵抗感があるだろうということであえて難しい言葉を使うのです。

こうした法律専門用語や難しい言葉にごまかされないように注意することが必要です。

そもそも、示談して損害賠償金を受け取ることに合意しても、相手を許す必要はありません。損害賠償権を行使することと、許すということは別のことです。許す気持ちであるなら、示談書に「許す」という言葉を入れますが、許す気持ちになれない場合は、この言葉を入れずに示談をします。

犯罪は、民事上では「不法行為」(民法709条)ということになります。これにより、被害者は、加害者に対して民事上の損害賠償請求権をもちます。示談とは、この損害賠償請求権についての合意です。つまり、示談をして賠償金を受け取るということは被害者の権利なのです。権利を行使するだけなのですから、それに「許す」といった条件を付ける必要はないのです。

慰謝料の相場ってあるの?この様なご質問を受けることがよくあります。実は、「相場」はありません。慰謝料と言うのは精神的な損害に対する補償です。これは人によって違うことは当然です。また、被害の程度、被害者の特性、後遺症の有無、犯罪行為の程度(故意か過失か、行為の悪質性など)などは、それぞれのケースで違います。したがって、賠償金の「相場」というものはなく、それぞれの事情によって大きく異なります。

交通事故の賠償においては、これまでに積み重ねられた事例を基にして賠償金計算方法についての基準が作られていますが、交通事故以外の犯罪においては、そのような基準は存在しません。ですから、加害者に対していくら請求するのかということについては、それぞれの事情に応じて判断するしかありません。

私は検事として多くの事例に関わり、刑事事件の実務に精通していますので、あなたにとってベストの示談交渉を行うことができます。ぜひ、ご相談ください。