刑事事件コラム(刑事弁護)

供述調書にサインしない|事実と違っていたら

刑事事件コラム(刑事弁護)

供述調書へのサインを拒否すると、警察官の心証が悪くなるのでは、と心配されるかもしれません。サインを拒否すると確かに警察官の心証は悪くなります。しかしあなたが記憶している事実と違うことが供述調書に書かれていたら、サインはしてはいけません。

細かな事柄や、ニュアンスなどが違っている場合もサインをするべきではないでしょう。何故なら、細かな事柄、ニュアンスなど、素人にとっては大差ないと感じられることでも、法律的にとらえた場合、その細かな違いによって法的評価が変わってくることがあるからです。

たとえば、公園のベンチにあった他人のカメラを自分の鞄に入れてしまったという事実があったとして、自分の鞄に入れたのが、そのカメラの持主がすぐ横のトイレに入っている間だったのか、公園の外に出て行ってしまってしばらくたってからだったのかによって、窃盗か遺失物横領かが決まります。

・窃盗の場合は、10年以下の懲役、または、50万円以下の罰金になります。

・遺失物横領の場合は、1年以下の懲役、または10万円以下の罰金や科料になります。

供述調書にサイン、捺印をするということは、そこに書かれた内容が、あなたが記憶している事実に間違いないと認めた、ということになります。

サインをしないでください、というのは、嘘をついてください、と言っているのではありません。あくまでも、事実と異なるのであれば、妥協してサインをするべきではない、ということです。

 

事情聴取や取り調べでは、容疑者はまず話を聞かれます。その後、容疑者が話した内容を、警察官や検察官が、内容を整理し、時間順に並べ、ポイントを絞り、構成して作成されます。

つまり、供述調書には容疑者が話した内容そのままを書かないということです。

そのため、後になって、「言ったことが書かれていない。捜査官が勝手に話を作ったが、署名しないといけない雰囲気にされて本当は違うと思いながらも署名した。」などと主張されることがあります。

ですから、逮捕前の事情聴取や、逮捕勾留されてからの取り調べで、自分が言ったことと違うことが書かれていたり、言葉のニュアンスなどが納得できない場合は、その場で主張して書き直してもらうか、あるいは署名を拒否した方が良いと思います。

 

また、供述調書は、「私は、○○に行きました。」といった物語式に書かれることが一般的ですが、「問 このときあなたは、○○に行きましたか」「答 いいえ、私は、そのときには○○には行ってません。」といった問答形式で書かれることもあります。

警察官や検察官が、容疑者が言っていることが信用できない、あるいは他の証拠と矛盾すると考えた場合、こうした書き方をします。

 

※裁判員裁判対象事件などにおいては、取調の様子を録音録画することが法律で決められました。ただし、この録音録画は、逮捕勾留されている間の取り調べが対象です。

 

参考:以下は「検察庁から呼び出されたら|取り調べ・事情聴取」からの引用です。こちらも参考にされてください。

【裁判での供述調書の証拠能力、信用性について】

裁判で供述調書の証拠能力、信用性が争われる場合、検察官の供述調書の方が、警察官の供述調書よりも、証拠能力、信用性が高く評価されるように法律で決まっています。

しかしこれは、被疑者以外、つまり被害者、参考人、目撃者の証言に関しての話であり、被疑者の供述調書は、警察のものと検察のものと変わりなく同等に裁判で評価されます。

ですから被疑者が検察庁での取調べの際、警察での供述調書の内容と異なる供述をし、警察の供述調書とは異なる内容の供述調書が作製された場合、同等の証拠能力、信用性のある、異なる内容の供述調書があるという評価を裁判でされます。すると、どっちが本当なのか、ということになり、被疑者本人が信用できない人である、という評価を裁判でされてしまう可能性があります。

万一、警察での取調べで、あなたが記憶している事実と違う供述をしてしまい、署名捺印をしてしまったのなら、検察官に事情を話し、それを覆す内容を検察官に話し、別の内容の供述調書を作成して訂正してもらうことができます。しかし、最初(警察での供述)と違う内容であるとして、検察官に信用されない可能性がありますし、前述のように裁判でも信用されない可能性があります。

ですから、警察での供述調書の内容が、自分が記憶している内容と違っていたら、供述調書が作製された後でも、署名捺印を拒否すべきです。署名捺印をしなければ、その供述調書をなかったことにできます。