刑事事件コラム(刑事弁護)

執行猶予にしてほしい

刑事事件コラム(刑事弁護)

目次

・執行猶予とは

・執行猶予が認められる基準は?

・検事経験を活かして

・執行猶予が取り消されることがあるのか?

・一部執行猶予とは?

・保護観察付きの執行猶予とは?

・執行猶予の期間中に罪を犯したら…

・執行猶予の期間が終了した後で、新たに罪を犯した場合はどうなるのか?

・執行猶予中の制限や影響について

・執行猶予が認められるには

 

 

【執行猶予とは】

執行猶予とは、刑務所に入れるよりも社会内で生活しながら反省させた方が、再犯防止に役立つという考え方から認められているものです。

ただし、犯した罪があまりにも大きい場合には執行猶予が認められることはありません。たとえば、殺人で執行猶予が認められることはほとんどありません。

つまり、反省し、自分を律しながら暮らし、執行猶予の期間が無事に過ぎた場合、その事件について刑務所に入ることはなくなります。

ただし執行猶予は有罪判決であり前科がつきます。

 

 

執行猶予が認められる基準は?

■判決で言い渡される刑が、懲役(禁錮)3年以下、または罰金50万円以下であること。

■5年以内の前科がないこと

■執行猶予期間中でないこと

 

その上で、社会内での反省をさせることの方が刑務所に入れるよりもよいということを証明することになります。

そのためには、

■十分に反省していること

■社会内で監督する者がいること

 

この2条件は是非とも必要ですが、その他にも、その人の置かれた具体的な状況によって主張できることが違ってきます。

 

 

【検事経験を活かして】

私は元検事の弁護士であり、検事生活26年のほとんどを捜査・裁判の現場で過ごしました。

ですから、執行猶予を得るために、上記の条件の上で、裁判官に対して具体的に何をどう訴えれば良いのかを熟知しており、適切な弁護活動をすることができます。

罪を認めている場合は、執行猶予を勝ち取るべく力を尽くします。

 

また、地方裁判所での裁判で、執行猶予のつかない有罪判決を受け、実刑となってしまい、その判決に納得ができないという場合もあるかと思います。

そのような場合には、執行猶予を得るために高等裁判所での裁判をすることを要求できます。つまりもう一度だけ試行猶予を求めてリベンジできるわけです。

控訴審である高等裁判所での裁判は、高等検察庁の検事が担当します。

私は高等検察庁勤務の経験もあり、高等裁判所での控訴審を検事の立場で経験しましたので、控訴審でどのような弁護活動を行えば執行猶予を得ることができるかについても、豊富な経験と知識を持っています。

 

 

【執行猶予が取り消されることがあるのか?】

次の場合は執行猶予が必ず取り消されます。

 ■執行猶予中に新たに罪を犯し、禁固以上の実刑になった場合。

例えば、懲役1年、執行猶予3年の判決が確定後、執行猶予期間内(この場合は3年以内)に、何かの罪を犯して、起訴され裁判を受けて、執行猶予のつかない実刑判決(禁固以上、罰金は入らない)を受けたら、最初の罪の執行猶予が取り消され、最初の罪の刑期と、今回の罪の刑期を足した期間の実刑になる。

 

■執行猶予期間中に、以前の罪が発覚し、禁固以上の実刑になった場合。

例えば、懲役1年、執行猶予3年の判決が確定した後、その執行猶予期間内 (この場合は3年以内) に、以前に犯した罪が発覚し、起訴され裁判を受けて、執行猶予のつかない実刑判決(禁固以上、罰金は入らない)を受けたら、後に犯した罪での執行猶予が取り消され、前に犯した罪の刑期と今回に罪の刑期を足した期間の実刑になる。

 

 

次の場合は執行猶予が取り消されることがあります。

■猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられた場合。

例えば、懲役1年、執行猶予3年の判決が確定した後、執行猶予期間内 (この場合は3年以内) 、何かの罪を犯し、起訴され裁判を受けて、罰金に処せられたら、最初の罪の執行猶予が取り消され、最初の罪の刑期の実刑になることがある。

 

■第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重い場合。

例えば、懲役1年、保護観察付の執行猶予3年の判決が確定した後、その執行猶予期間内(この場合は3年間)に、保護観察中の定められた順守義務を守らず、しかも態度が著しく悪い場合、その保護観察付きの行猶予が取り消され実刑になることがある。

 

 

【一部執行猶予とは?】

■刑の一部だけを執行猶予とする制度です。

例えば、「被告人を懲役2年に処する。その刑の一部である懲役4月の執行を2年間猶予する」という判決であったとします。

これは、2年間の懲役を、1年8か月と、4か月に分け、1年8か月は実際に服役し、その服役後に4か月の執行猶予期間である2年間がスタートします。

執行猶予が取り消されないでこの2年間の猶予期間が満了すれば、4か月分の懲役は執行されないことになります。

 

■一部執行猶予判決のためには以下のアからウの条件が必要です。

  • (ア) 前に禁錮以上の判決を受けて服役していないか、あるいは、刑の執行が終わった日から5 年以上経過していること
  • (イ) 判決で言渡す刑が、3年以下の懲役または禁錮刑であること
  • (ウ) 情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために、一部執行猶予が必要であり、かつ、相当であると認められること

(ア)と(イ)は、客観的に決まってしまいますが、(ウ)はケースバイケースということになります。

なお、覚せい剤のような薬物事犯だけは(ア)の条件がありません。

つまり、薬物犯罪では、どんな前科があっても、判決で3年以下の刑を言い渡す場合であれば一部執行猶予とすることができるということです。

ただし、薬物犯罪で一部執行猶予とする際には必ず保護観察付とされます。

 

 

【保護観察付きの執行猶予とは】

執行猶予の期間中に、保護観察官や保護司の方の指導や監督を受けながら暮らす、という、条件付きの執行猶予のことです。

定期的に、保護観察官や保護司との方と面会し、判決で定められた順守事項を守っているかを監督されます。

「執行猶予の取消とは?」で書いたとおり、保護観察中に、この定められた順守義務を守らず、しかも態度が著しく悪い場合、その保護観察付きの行猶予が取り消され、実刑になることがあります。

また、新たに罪を犯した場合には必ず実刑になります。この場合、保護観察付きの執行猶予がついた罪の実刑の刑期と、新たに犯した罪の刑期とを足した刑期の実刑になります。

 

 

【執行猶予の期間中に罪を犯したら…】

執行猶予期間中に罪を犯し、起訴され裁判を受ける場合には、原則として執行猶予は認められず実刑になります。

「執行猶予が取り消されることがあるのか?」で書いた通り、最初の罪と、新たに犯した罪の刑期を足した刑期の実刑になります。

しかし、例外的に、もう一度だけ執行猶予となる場合があります。これを再度の執行猶予といいます。

刑法第25条2項には「執行を猶予された者が、1年以下の懲役または禁錮の言渡しを受け、情状特に酌量すべきものがあるとき」には、もう一度執行猶予とすることができると定められています。

 

■再度の執行猶予となるには、次の二つの条件が必要です。

① 言渡された刑が1年以下であること

 情状特に酌量すべきものがあること

この2つの条件を満たすことは、意外に厳しいものです。

 

たとえば、覚せい剤事犯では再犯者に言渡される刑が1年以下となることはまずありません。1年以下の刑となるような事件は、交通違反か常習性が認められない万引きくらいではないかと思います。

 

しかも、検察庁では、再度の執行猶予判決が出ると、必ず控訴審査を行います。控訴審査とは、一審の判決でよしとしてよいのかを検討する会議のことです。

つまり、本当に再度の執行猶予としてよいのかを検討するわけです。

 

再度の執行猶予でよしとするかを検討する場合の控訴審査では、かなり高い確率で、「控訴する」という判断となると思います。

これは、再度の執行猶予は検察としては不服であるから、高等裁判所に控訴して、「再度の執行猶予を認めない」、という判決を求めて戦う、ということです。

 

ですから、最初の裁判 (地方裁判所) で、再度の執行猶予判決をもらったとしても、すぐに安心することはできません。

検察が控訴する確率が高いですし、控訴審である高等裁判所で「再度の執行猶予を認めない」とする判決が出る可能性もあるからです。

 

私の経験では、検事時代に扱った裁判で、再度の執行猶予判決をもらったことは一度もありませんでした。

再度の執行猶予判決に対して、控訴するかどうかを決める会議(控訴審査)に出席したことはあります。

 

このように、再度の執行猶予は大変珍しく、刑法上の制度としてはありますが、現実にはあまり適用されることのない規定です。

執行猶予期間中に罪を犯して起訴された場合には、刑務所に入ることを覚悟した方がいいと思います。

 

 

【執行猶予の期間が終了した後で、新たに罪を犯した場合はどうなるのか?】

法的には何の影響もありません。

しかし、前に罪を犯して処罰されたことがあるということから、罪を犯しやすい人間であると思われ、起訴猶予となる可能性は低くなります。

中でも薬物犯罪の場合には、厳しく処罰されることになるでしょう。

 

 

【執行猶予中の制限や影響について】

保護観察付きでない執行猶予の場合は、基本的には仕事や旅行などに何の制限もありません。

 

ただし、禁固以上の刑を受けたことにより資格を失うことがあります(医師、薬剤師など)。また、公務員では懲戒免職の対象となります。

引っ越し、旅行などでは何の制限もありません。ただし、海外旅行の場合、国によってはビザが下りない場合がありますので、事前に、行きたい国の大使館などに確認した方が良いでしょう。

 

保護観察付き執行猶予の場合は、月に1回程度、保護観察官あるいは保護司との面談が義務付けられることになります。

順守条件を守っているのかなどを定期的に確認され、もし、条件に違反していることが確認されると、執行猶予が取り消されて服役することになる可能性があります。