刑事事件コラム(刑事弁護)

判決に不服|控訴したい

刑事事件コラム(刑事弁護)

目次

・もう一度裁判をしてもらう

・控訴する際に注意すべきこと

・控訴趣意書の重要性

・どのような控訴趣意書を書けばよいのか

・丁寧な準備と打合せ

・提出できる証拠は限られる

・控訴審である高等裁判所での裁判は、高等検察庁の検事が担当します

 

 

もう一度裁判をしてもらう

一審(地方裁判所または簡易裁判所)での判決に不服がある場合、もう一度裁判をしてもらいたいと申立てることができます。これを控訴といいます。

控訴が受け入れられ行われる裁判 (審理)のことを控訴審といいます。控訴審は高等裁判所で行われます。

控訴審で何を主張するのかで、大きく分けると2つの場合があります。

 

  • ■無罪を主張
  • 一審で無罪を主張していたのに有罪の判決となった場合は、控訴審でもう一度無罪を主張することができます。

 

  • ■量刑に不満があると主張
  • 一審で有罪判決になったのは仕方ないものの、量刑に不満がある場合は、言渡された刑期(懲役○○年)が重すぎるのでもっと軽くしてほしい、または、執行猶予を付けて欲しいと主張することができます。

 

 

控訴する際に注意すべきこと

いずれの場合にも共通して気を付けなければならないのは、次の2点です。

 

  • ■控訴の申立
  • 控訴申立期間は、判決後2週間以内です。この期間を過ぎてしまうと控訴できなくなります。

 

  • ■控訴趣意書の提出
  • 控訴申立後、控訴趣意書を提出します。その際、高等裁判所から指定される「控訴趣意書提出期限」を厳守しなくてはなりません。提出期限は事案により異なりますが、控訴申立後おおよそ50日くらいです。控訴趣意書の提出期限を守らないとそれだけで控訴棄却、つまり控訴が認められないということになります。

 

 

控訴趣意書の重要性

控訴において最も大切なものはこの控訴趣意書です。

高等裁判所の裁判官は、一審で調べられた記録全てと控訴趣意書を読んで、控訴に理由があるかどうかを判断します。この段階で、高裁裁判官が、控訴理由(被告人の主張)を検討しないと判断してしまうと、第1回審理で結審させてしまい、ほとんど審理は行わないまま2回目で判決を出してしまいます。この場合、結論は、もちろん控訴棄却です。

ですから、控訴趣意書では、高裁裁判官に「なるほど、被告人の言うことにも一理あるな。」と思ってもらうことが必要となります。そうなると、被告人側が新しく提出する証拠なども見てみようということになります。

控訴審で必要な審理を行った結果、必ず被告人の主張が認められて無罪になったり、量刑が軽くなるわけではありませんが、少なくとも新しい判断をしてもらうための入り口に立つことができるわけです。

 

 

どのような控訴趣意書を書けばよいのか

では、どのような控訴趣意書を書けばよいのかということですが、ケースバイケースとしか言いようがありません。

まず前述の、〖無罪を主張していたのに有罪の判決となった場合〗は、控訴審でもう一度無罪を主張するのですから、一審判決が事実認定を間違えているとか、法律の解釈を間違えているなどと主張することになるでしょう。

一方、前述の、〖有罪は仕方ないものの量刑に不満があり、言渡された刑期(懲役○○年)が重すぎるのでもっと軽くして欲しい、又は執行猶予を付けて欲しいと主張する場合〗には、一審判決の情状についての評価・判断が間違っているという主張が中心となるでしょう。

この様に、無罪を主張するのか、量刑に不満があるのかでは、控訴趣意書における重点の置き方が全く異なります。

 

 

丁寧な準備と打合せ

いずれの場合でも、事件によってそれぞれの事情は全く異なります。控訴審を担当することとなった弁護士は、一審判決と記録を丁寧に読み込んだ上で、被告人と打合せを重ね、裁判官に「一理あるな」と思ってもらうためには何をどう主張すればよいのかを考えることになります。

 

 

提出できる証拠は限られる

なお、控訴審では、一審で調べることのできた証拠は新たに提出することは原則としてできません。

 

新たに証拠請求できるのは以下のものです。

  • ■一審判決後に生じた事実を証明する証拠
  • 例えば、一審判決後に、結婚した、示談が成立した、就職したなどです。

 

  • ■一審段階では入手できていなかった証拠
  • 例えば、特定できなかった目撃者が判明した、行方が分からなかった文書を発見したなどです。

 

控訴審である高等裁判所での裁判は、高等検察庁の検事が担当します

私は元検事の弁護士であり、検事生活26年のほとんどを捜査・裁判の現場で過ごしました。そしてまた、高等検察庁勤務の経験もあり、高等裁判所での控訴審を検事の立場で経験しました。

ですから、控訴審で裁判官に対して、具体的に何をどう訴えれば良いのかを熟知しており、どのような弁護活動を行えば執行猶予を得ることができるかについても、豊富な経験と知識を持っています。