刑事事件コラム(刑事弁護)
業務上横領の罪の重さと示談の重要性
目次
・業務上横領罪とは
・業務上横領罪はどんな処罰になるのか
・業務上横領罪の時効は
・自己破産をすれば賠償責任はなくなるのか
・示談が重要
・検察官が、どの程度の処罰にするのかを決定する際に、どのような事柄を重視するのか
・検事の経験を活かして
・業務上横領に似た、横領(単純横領)罪と遺失物横領罪とは
・「他人のものをひそかにとる」行為は、横領罪の他に、窃盗罪、背任罪がある
【業務上横領罪とは】
業務上横領とは、仕事などで他人から頼まれて占有している(例えば預かっている) 他人のものを、自分のものにしてしまうことです。
たとえば、新聞代金の集金をしている人が、集金した現金を自分のために使ってしまうような場合です。
※業務とは、仕事、職務、職業などのように、社会生活上の地位に基づいて一定の行為を繰り返して行うことをいいます。
【業務上横領罪はどんな処罰になるのか】
10年以下の懲役になります。罰金刑はありません。
【業務上横領罪の時効は】
時効は7年です。7年を過ぎれば刑事上罰せられることはなくなります。しかし、民事上の責任は残ることがあります。
【自己破産をすれば賠償責任はなくなるのか】
自己破産手続きをしても、裁判所は、ギャンブルによる借金が原因での免責を認めないのと同じく、犯罪による賠償責任がある場合も免責を認められないと考えられます。したがって、業務上横領の賠償責任は免れることはないでしょう。
【示談が重要】
被害者は、示談をして被害が回復すると、加害者の処罰までは求めない、としてくれることがあります。そして、示談書の中に「示談したので、処罰は求めない」という文章を入れられると、警察の捜査が打ち切りとなる可能性は高くなります。
また、検察は、業務上横領事件の場合、被害者の意思を最も重視して起訴・不起訴の判断をしますので、示談が成立し、被害者が「加害者の処罰は求めない」としていると、不起訴とすることが多くなります。
仮に起訴となった場合でも、示談成立により求刑・判決が軽くなることがあります。
しかし、起訴・不起訴の判断に当たっては、前科の有無なども考慮に入れますので、「被害者が許した」ということだけで、検察の処分が軽くなるわけではありません。
【検察官が、どの程度の処罰にするのかを決定する際に、どのような事柄を重視するのか】
・被害金額の大きさ
・やり方が悪質か、巧妙かどうか
・繰り返している回数、期間
・示談が成立しているかどうか
・どれだけ被害が回復したか
検察官は、以上のことを総合して検討し、処分(起訴か不起訴か、起訴の場合は求刑意見)を決めます。
【検事の経験を活かして】
私は元検事の弁護士であり、検事生活26年のほとんどを捜査・裁判の現場で過ごしました。警察の捜査、検察庁の処分基準、裁判所の判断基準などに精通しています。
業務上横領に関しても熟知していますので、適切な弁護活動をすることができます。是非、早めにご相談ください。
【業務上横領に似た、横領(単純横領)罪と遺失物横領罪とは】
横領(単純横領)とは、他人から頼まれて占有している(例えば預かっている)他人のものを自分のものにしてしまうことです。
5年以下の懲役になります。罰金刑はありません。
遺失物横領は、誰のものであるのか分かっていない物、落とし物、忘れ物、などを自分のものにしてしまうことです。
1年以下の懲役、または10万円以下の罰金や科料になります。
【「他人のものをひそかにとる」行為は、横領罪の他に、窃盗罪、背任罪がある】
たとえば、コンビニのパート店員が、店のレジから売上金1万円を自分のポケットに入れたという場合、窃盗罪になります。パート店員は、売上金の管理を任されていないでしょうから、売上金を管理していると言えないからです。
窃盗罪は、10年以下の懲役、または、50万円以下の罰金になります。
では、店長ではどうでしょうか。もし、店長が売上金の管理を任されているのであれば、業務上横領となります。
このように、業務上横領と窃盗罪の違いは、被害品の所有者との関係があるかどうかということになります。物の所有者から頼まれて預かっている、仕事の上で一時管理することになっている場合に自分のものにするのが業務上横領であり、所有者とは何の関係もない場合に窃盗になります。
しかし、店長だから、パート店員だから、ということで、管理しているかどうかが決まるわけではありません。店長であっても管理していない場合もあるし、パート店員であるのに管理しているというケースもあり得ます。
また、店長が、売上金の管理だけでなく、仕入れも任されていることを利用して、知り合いの業者から不当に高い金額で仕入れをし、その業者からリベートをもらった場合、店に対して損害を与えていますから、背任罪となります。
背任罪は5年以下の懲役、または50万円以下の罰金になります。
以上のように、ケース毎の細かな事情により、どんな罪になるのかが異なってきます。正確に把握されたい場合は、法律のプロである弁護士に事情を具体的に伝えてご相談ください。