刑事事件コラム(刑事弁護)

微罪処分とは

刑事事件コラム(刑事弁護)

警察は、告訴や被害届を受理するなどして捜査を開始した場合は、原則として事件を速やかに検察に送らなければならないことになっています(全件送致原則)。

テレビのニュース等で「送検されました」と報じられるのは、この検察への送致の事です。

被疑者(マスコミでは容疑者と呼ぶことが多い)を逮捕している場合を「身柄付き事件送致」といい、逮捕していない場合を「在宅事件送致」(いわゆる書類送検)といいます。

 

微罪処分とは、「全件送致原則」の例外で、警察が事件を検察官に送致せず、警察だけの判断で被疑者を処罰しないことにできるものです。

微罪処分となれば、今後送検される可能性がほとんどなくなり、したがって起訴されることもなく、前科となることもありません。

ただ、警察内の記録(前歴)は残りますが、この記録は捜査機関以外が閲覧することはできません。

 

微罪処分で済んだのでよかったと思うかもしれませんが、その後、別の犯罪で捜査された場合は、その犯罪にこの前歴の分も加えて送検しようか、という事があり得るので注意が必要です。

 

微罪処分については、「犯罪捜査規範」に以下のように定められています。

○犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)

(微罪処分ができる場合)

第198条 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検 察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについて は、送致しないことができる。

 

この様に書かれていますが、微罪処分の基準が具体的には書かれていません。どの程度の犯罪であれば微罪処分とするのかについては、警察と検察の間で申し合わせがあり、具体的な基準が決められていますが、これは公表されません。

 

微罪処分として認められるのは、

①侵害された利益の程度が低い

②悪質な犯罪ではない

③被害者が処罰を望んでいない

④再犯のおそれがない

ことが必要です。

これを典型的な犯罪類型に当てはめると

 

<窃盗>

①被害額が低額

②万引きなど衝動的な犯罪

といったことになりますが、他の③、④も含めて総合的に判断されます。たとえば、たまたま被害額が低額であっても、計画的な犯罪であったり、万引きしたものを売りさばくことを繰り返し行っているなど、悪質なものであれば、微罪処分とはなりません。

 

<暴行>

たまたま怪我をさせなかったというだけで、凶器を使用しているなど悪質な犯罪であれば微罪処分とはなりません。なお、傷害となった場合は、微罪処分とはできないと思われます。

 

<賭博>

掛け金が低額で、特定の仲間内だけで行っているような場合は微罪処分となります。職場内でジュース代をかけてじゃんけんをするなどといった場合です。